蒼風閑語

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新明解国語辞典 第二版

先日神保町でとても状態の良い『新明解国語辞典 第二版』(三省堂)を見つけて持ち帰ったのですが、これを今愛用している「第五版」と読み比べるのが結構面白いです。

ちなみに現在愛用中なのは1997年12月1日発行の第五版第二刷で、新しく入手したのが1979年1月20日発行の第二版第二十刷。成人式の記念品として新成人に配布されたものらしく、表紙に「祝成人 株式会社千葉相互銀行 昭和56年1月15日」と名入れが施されています。

まずは「序文」から。第五版は山田忠雄主幹の没後最初の改版という事もあり、編集委員代表として柴田武氏が序文を執筆しているのですが、第二版は山田氏自身の筆によるもの。しかも山田氏が主幹を務めたのも柴田氏が編集に携わったのもこの第二版が最初という事ですから、なかなかエポック・メイキングな版と言えそう。

さて、編集主幹たる山田氏の一種独特とも言えるパーソナリティはこの第二版序文にして既に色濃く表出しており、例えば文の中程で目を引いているのはこんな辛口の箴言

 “思えば、辞書界の低迷は、編者の前近代的な体質と方法論の無自覚に在るのではないか。先行書数冊を机上にひろげ、適宜に取捨選択して一書を成すは、いわゆるパッチワークの最たるもの、所詮、芋辞書の域を出ない。”

ううむ・・・「芋辞書」ですか。そこで【芋】の見出し語を引いてみると、こんな具合。

 【芋】 ①草の根で主食の代用となるもの。丸みを帯びたものが多い。サツマイモ・ジャガイモ・サトイモ・ヤマノイモなど。〔広義では、ダリアなど草花の根をも指す〕 ②〔芋を主食とするほど貧乏な意〕 程度が低くて、論じるには足りない。 「芋侍」〔貧乏で志の極めて低い武士〕・「芋辞書」〔大学院の学生などに下請けさせ、先行書の切り貼りででっち上げた、ちゃちな辞書〕・・・(以下略)。

「造語」としてちゃんと語釈まで載せててスゴいのですが、ここは残念ながら第五版では削除されており、もう少し穏当な例示が採用されています。

「序文」だけでも「おお!」と膝を打ったり思わず唸ったりしてしまう記述が満載なのですが、本文の方にも相当の変更点があって面白いので、気が付いたらちょこちょことネタにしてみようかな・・・などと思っているところです。