外国語上達法
千野栄一氏1986年の著作『外国語上達法』(岩波新書)を読了しました。
奥付を開いてみれば、第1刷の刊行が1986年の1月で2011年の2月に第41刷となっていますから、押しも押されもしない堂々たるロング&ベストセラー新書といえます。
年末に神保町の新刊書店で実施されていた岩波新書の「読者が選ぶこの一冊」フェアにも本書が平積みされていましたし、私自身様々な折に評判を聞き及んでいたので機会があれば是非読んでみたいと考えていたのです。
そうして実際に読み始めてみたところ、これがもう実に面白い。ひとたびページを繰り始めると本を置く暇(いとま)も覚えず、それこそアッという間に読み終えてしまいました。
とはいえ、本書には決して画期的でラクチンな学習法が記されていたり、ましてイマドキの新書のようにただ読者を甘やかすだけの安易なコトバが並べられている訳ではありません。
むしろ内容的には極めてオーソドックスで、煎じ詰めれば「語学を習得するのに王道などありませんよ」と改めて言われている様な気がする位のもの。しかしその記述がスッキリとして明快で巧まざるユーモアに彩られているので、読者は知らぬ間に筆者の世界に引き込まれて読み進めてしまう・・・といったところでしょうか。
読み終えた時には無性に勉強したくなるし、何だかやれば出来るような気になっているのが不思議なところというか、そういった読後感を持っている事こそがロングセラーとなって長く読み継がれている秘訣なのかも知れません。
それでは覚書代わりに、本書の第3章に記されていた「外国語上達のために必要なもの」を引用しておくことにしましょう。
“言語の習得にぜひ必要なものはお金と時間であり、覚えなければ外国語が習得できない二つの項目は語彙と文法で、習得のための三つの大切な道具はよい教科書と、よい先生と、よい辞書ということになる。”