蒼風閑語

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英文快読術

行方昭夫(なめかた・あきお)氏1994年の著作『英文快読術』(岩波書店)を読了しました。

この手の英語学習法を説いた本は時々読みたくなるのですが、本書の様に既に一定の評価を受けてロング・セラーになっているものは「学習の基本姿勢」を再確認するのにうってつけです。

全体は大きく5つの章に分れており、内訳は第1章「日本人と英語」、第2章「対応策を考える」、第3章「正しい読解のための12のヒント」、第4章「英文解釈から翻訳へ」、第5章「長文を味わう」、という流れ。

第1章には“―現状を分析する―”というサブ・タイトルが付けられているのですが、この章の特に第2節や第3節を読んでいると、本書が刊行されてから20年後の現在でも状況はあまり変わってないんじゃないかという気がして来ます。

とにかく「英語少しは出来ます」という社会人や試験で「まあまあ出来ました」と答える学生さんが “いかに出来ていないか” を記したくだりなどは、我が身を振り返ってみても身の竦む思い。

続く第2章でとにもかくにもまずは基礎力を高めましょう・・・という事で具体的な学習方法が提示されるのですけれども、とにかく基本はその時点での自分のレベルに応じた原語テキストを多読すること。

ここで何より大切なのは「その時点での自分のレベルに応じた」というところで、やり直し英語派の人なら最初は1000語クラスの "Retold版" テキストから始めてみては、というとても現実的なアドヴァイスには大きく頷いてしまいました。

そして第5章には決して難易度が高過ぎずしかも含蓄溢れる4本のテキストが抜粋されており、これがどれも面白い。しかも著者による懇切な傍注が付けられているので訳出するにも無理がありません。

読んで納得するだけでなく、実際に手を動かしてテキスト自体を味わう愉しみもタップリ用意された「得難い良書」ではないかと思います。