猫舌流 英語練習帖
柳瀬尚紀氏2001年の著作『猫舌流 英語練習帖』(平凡社新書)を読了しました。
猫の「吾輩」が主人ならぬ「守人」たる柳瀬氏に代わって執筆するという趣向で書かれた英語と日本語についてのエッセイ。
まるで柳瀬氏による訳業のエッセンスがギュギュッと濃縮されて詰まっている様な一冊で、安易なハウツーものの新書とは明らかに一線を画した高度な内容でした。
全体は5つの章から成っており、内訳は第1章「吾輩は猫である」、第2章「鼠を捕るのは思つたより六づかしい」、第3章「御酒はもういゝでせう・・・」、第4章「オタンチン、パレオロガス」、第5章「づうづうしいぜ、おい」という流れ。
こうして各章のタイトルを並べてみただけでも本書が持つ独特な味わいの一端が感じられると思うのですが、本文の方も紛うこと無くアノ「柳瀬テイスト」に満ち溢れています。
英和辞典を傍らに置いて語釈をあたったり、「腕試し」と称する例文の解釈を試みたりしながら読み進めていると、読了までにはかなりの時間を要するのですが、まぁ愉しみは長いに越した事はありません。
では、本書で見付けた「柳瀬テイスト」を強く感じる一文のひとつを以下に引用しておきましょう。
“歴史は繰返す、は〈History repeats.〉といえばいいだろうと、そう思いたくなる。しかしそれでは英文として成立たない。なんというか、英語としてチャックが、ジッパーが、ちゃんと閉じていない感じがするのである。〈History repeats itself.〉となって、キチンとジッパーが締まるのだ。”