蒼風閑語

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ゾウの時間 ネズミの時間

本川達雄氏が1992年に上梓なさった理科学系新書のロング・セラー『ゾウの時間 ネズミの時間』(中公新書)を読了しました。

実は本書を買い求めたのはもう随分前の事になるのですけれども、何となく読みそびれたまま本の山の中に埋没させてしまっていたのでした。

それが先日ふとしたきっかけで手に取って読み始めたところ、あまりの面白さに一息に読み上げてしまったという訳です。面目ない。

・・・さて、本書について端的に言うならば「動物生態学と形態学を縦断的に記述した一般向け解説書」という事になりそうですが、その内容はかなり多岐に渡っています。

その内訳を列挙してみると、第一章「動物のサイズと時間」、第二章「サイズと進化」、第三章「サイズとエネルギー消費量」、第四章「食事量・生息密度・行動圏」、第五章「走る・飛ぶ・泳ぐ」、第六章「なぜ車輪動物がいないのか」、第七章「小さな泳ぎ手」、第八章「呼吸系や循環系はなぜ必要か」、第九章「器官のサイズ」、第十章「時間と空間」、第十一章「細胞のサイズと生物の建築法」、第十二章「昆虫―小サイズの達人」、第十三章「動かない動物たち」、第十四章「棘皮動物」という流れ。

とにかく例えが巧みでトピックをセレクトするセンスが抜群。個人的に理科学系中公新書中の白眉だと考えている田口善弘氏1995年の著作『砂時計の七不思議』にも匹敵する面白さ・質の高さではないかと思います。

本来難しい事を実に判り易く、しかも本質的な部分を損なわずに書き記した稀有な一冊です。機会があれば是非御一読を。

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)