蒼風閑語

ll_bluewind_llのひねもすのたりのたり

戦争の条件

藤原帰一氏2013年の著作『戦争の条件』(集英社文庫)を読了しました。

巻末の「結び」と「ブックガイド」を併せてちょうど200ページという、新書としては標準的なサイズだったのですけれども、読み終えるまでにはおよそ10日ばかり。

というのも本文中のいたる所に太字で挿入されている設問が秀逸で、それらの問い掛けにぶつかる度に本を置いては考え、新聞を開いてはニュースをあたり、再び考える・・・といったプロセスを踏んでいたからなのです。

例えば第一章の冒頭にある問一は、「A国がB国に軍事侵攻を開始した。B国はどうすればよいだろうか。」というもの。どうするもこうするも答えは一つだけでしょ?と思ったところで、じゃあなぜ答えがその一つだけになるのかを考えてみましょう・・・と。

しかもそれらの設問は決して絵空事ではなく、普段国際ニュースで目にしている中東と東アジア情勢を元にしたもの。普遍的な問題として考えられる様具体的な国名は伏せられているものの、容易に「これはあの国とあの国のことだな」と推測できる巧みなものでした。

さて、本書は大きく8つの章から構成されており、内訳は第一章「戦争が必要なとき」、第二章「覇権国と国際関係」、第三章「デモクラシーの国際政治」、第四章「大国の凋落・小国の台頭」、第五章「領土と国際政治」、第六章「過去が現在を拘束する」、第七章「ナショナリズムは危険思想か」、第八章「平和の条件」、という流れ。

もちろん戦争の条件とは、平和の条件とは、といった大きな問い掛けに対する単純明快な「解答」が本書の中に用意されている訳ではありません。

むしろ沢山の設問に対して著者が問題の背景と考え方のヒントを提供し、それらを手掛かりに読者自身が解答を模索するという方針。読み上げるのにある程度時間が掛かるのも道理・・・かも知れません。

尚巻末の「ブックリスト」には、更に国際問題についt理解を深めるための推薦図書が多数掲載されており、これらの書籍にも機会があれば是非目を通してみたくなった事を申し添えておきましょう。

戦争の条件 (集英社新書)

戦争の条件 (集英社新書)