マーラーの交響曲
金聖響と玉木正之の両氏による2011年の共著『マーラーの交響曲』(講談社現代新書)を読了しました。
基本的な構成は、巻頭の「プレトーク」と巻末の「アフタートーク」という金氏と玉木氏による対談のパートで総論を、あとは1章につき1曲ずつ各交響曲についての解説を施すというもの。
楽曲解説に関する部分は概ね金氏が執筆を担っておられる様で、指揮者ならではの視点から見た作品論・作曲家論が柔らかい筆致で展開されており、マーラー・ファンならずとも興味深い記述が目白押し!と言えそうです。
特に「交響曲第4番」を “ほんとうは怖い音楽の童話” に例えて、意識的な「異化効果」を狙った作曲手法として説明した第4章の論旨など、思わず膝を打って「なるほど!」と独りごちてしまった程。
また、各章の最初にはそこで論じられる楽曲のデータが作曲年・初演年・演奏時間・オーケストラ編成の4項目にわたって逐一記載されているのに加え、巻末には年譜と参考文献リストまで添えられて資料的な価値を高めていました。
そして何より特筆すべきは、交響曲第10番のデリック・クックによる「補筆完成全曲版」についても1章を割いて、ポジティヴな解説を試みているところでしょうか。
後世の作曲家による補筆作だからといっていたずらに批判したり黙殺したりするのではなく、自らシッカリとスコアを吟味して良いと思えばキッチリと評価する・・・音楽家としても批評家としても実に真摯で誠実な姿勢だなぁ、と感じ入った次第です。
さて「まえがき」によると、本書は同じお二人で2007年に上梓なさっている『ベートーヴェンの交響曲』と2009年に刊行された『ロマン派の交響曲』に続くシリーズ第3弾ということでした。
順番があべこべになってしまいましたけれども、これらの2冊についても機会があれば是非目を通してみたいなと思っています。
あ・・・それともマーラー作品のスコアを1冊手に入れる方が先かな?