蒼風閑語

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かたちの不思議

ちょうど2週間ばかり前にネット古書店で見付けて買い求めていた、高木隆司氏1984年の著作『かたちの不思議』(講談社現代新書)を読了しました。

世の中にあるありとあらゆるモノのかたちに着目し、その形状をつぶさに観察する事によって本質を明らかにしたり類似の事物との関係性を浮き彫りにしたり。

執筆の対象となっている「モノ」を少しばかり列挙してみると、雪の結晶、バベルの塔、オカリナ、台風、カルマン渦、積乱雲、DNA、放散虫、ヒトデ、楔形文字、宗教記号、紐の結び目、シャボン膜、雪渓、セール、パラシュート、蜂の巣、複眼、牛乳パック、テトラポッド・・・。

最初の100ページ程をパラパラと捲って目に付いたトピックをランダムに拾っただけでこれだけのヴァラエティ。改めてこれらの「かたち」について仔細に眺めたり比較してみる程に、なるほど言われてみれば・・・と膝を打つ事の連続でした。

どこを取ってもどこから読み始めても面白くて興味深い記述ばかりなのですが、個人的には第2章の「線と面の造形」と第3章の「空間の分割」、第6章の「形をはかる」あたりが現代幾何学や物理学・工学との関連が強くて面白く感じました。

いわゆる「自己啓発本」の類(たぐい)とは執筆の動機や主旨が全く異なりますけれども、“発想力やモノの見方を鍛える”という意味合いにおいて、科学好きのみならず広く一般の読者の方々にもお薦めしておきたい一冊です。

かたちの不思議 (講談社現代新書 (741))

かたちの不思議 (講談社現代新書 (741))