蒼風閑語

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リスクセンス

ジョン・F・ロス著/佐光紀子さんの訳による2001年の著作『リスクセンス ― 身の回りの危険にどう対処するか』(集英社新書)を読了しました。

随分前に新聞の書評欄で目にしてずっと読んでみたいなと思っていたのですが、先日近所の古書店で見付けてようやく読み終える事が出来たのです。

内容はといえば全く期待に違(たが)わぬ面白さで、リスク管理と理論のイロハを概観するにはうってつけの一冊でした。

章立てを列挙してみると、第一章「リスクの達人ではないからこそ」、第二章「革命の幕を開けた変わり者の修道士」、第三章「ベッドの中さえ危ない世の中」、第四章「リスク管理全体主義的な一面」、第五章「白熊を巡る愚行もしくは危険に対する無意識のルールがどう災いを引き起こすか」、第六章「リスクは好き?嫌い?」、第七章「細胞撲滅闘争」、第八章「どこで線を引くか」、第九章「リスク・ゼロ神話」、第十章「リスク・マネージャーとしての新しい役割」という流れ。

また巻頭には短い「序章」が置かれており、ここに記された“北極圏における白熊との遭遇”のエピソードが、リスクに対する拙(まず)い対応のサンプルとして本文中で度々採り上げられる事になります。

著者のロス氏がリスク理論の専門家ではないという事実も奏功しているのかも知れませんが、ありがちな“統計学への手引書”然とした形に陥る事を免れている稀有な一冊ではないかと思います。

自ら情報を集め、考え、判断することの大切さに改めて思いを巡らせずにはいられなくなる良書です。古書店か図書館で探して是非御一読を。

リスクセンス―身の回りの危険にどう対処するか (集英社新書)

リスクセンス―身の回りの危険にどう対処するか (集英社新書)