蒼風閑語

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神保町の記事 2

昨日(4月9日)付『朝日新聞』第2東京面には、特集記事「神保町:本の街」の連載第2回が掲載されていました。

いや相変わらず面白い。今回の書き出しはこんな感じです。

 「せどり

 古書店や古書市で埋もれた高額本を見つけ、転売することだ。背表紙をみて本を取ることから、そう言われる。

確か「せどり」の語源については諸説あったと思うのですけれども、これはその内のひとつ。この言葉を目にして真っ先に思い出すのは梶山季之氏の『せどり男爵数奇譚』(ちくま文庫)でしょうか。

昨年10月21日の同紙夕刊に掲載された「ヘーゲルの自筆書き込み本神田の古書店で発見」の記事は未だ記憶に新しいところです。

この本を仕入れて販売したのが質の高い均一台でもつとに有名な田村書店。それを見て然るべき研究機関へ鑑定を依頼したのが明治学院大学の寄川条路(よりかわ・じょうじ)教授・・・という経緯を辿ったのでした。

  本は寄川教授が購入し、この研究所に寄贈される予定だ。寄川教授は「田村書店が見つけていなかったら、埋もれかねなかった」と感謝する。

それにしても、所謂「ビブリオマニア」と呼ばれるコレクターの世界ともなると、まさに「奇譚」というべき(時として犯罪スレスレの)逸話にも事欠かない様です。

記事の終盤では著名作家の蔵書を無断で持ち出しては古書店に持ち込んでいた名もない男のエピソードが紹介されており、「魅入られし者」の業の深さみたいなものも感じさせられました。

 それだけに最後を締め括っていた田村書店の奥平晃一氏によるコメントが、一層印象深く胸に響くものになっていたのではないでしょうか。

 「貴重な本を手に入れたいという思いは神保町に通う人ならみな持っている。でも本を選ぶ権利が人にあるように、古書にも持つ人を選ぶ権利があるんだよ」

・・・けだし、名言だと思います。

せどり男爵数奇譚 (ちくま文庫)

せどり男爵数奇譚 (ちくま文庫)