蒼風閑語

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キャロル・キング自伝

松田ようこさんによる2013年の翻訳『キャロル・キング自伝 ― ナチュラル・ウーマン』(河出書房新社)を読了しました。

2000年から足掛け12年にも及ぶ執筆期間を経て紡がれた大著だけあって読み応えは充分。一時代を築いたシンガー・ソングライターが自らの残した足跡を丹念に辿った一冊でした。

幼少時の生い立ちから始まって学生時代にスタートする音楽業界との関わり、他人への楽曲提供を生業としていたコンポーザー時代からシンガー・ソングライターとしてのキャリア、更に映画や演劇やミュージカルへの出演と、ビジネス面だけでも目まぐるしい程の活躍。

その上プライベートでは4度にわたる結婚と離婚を経験し、しかも4人の子供を立派に育て上げた辣腕主婦としての側面もあり、いっそ「ナチュラル・ウーマン」ならぬ「ミラクル・ウーマン」とでも呼びたくなる様な才媛ぶりと言えそうです。

才能のある彼女がポジティヴかつアクティヴに目の前の問題にぶつかって行くさまはいっそ清々しい程で、しかも失敗したり傷ついたりといった時の記述は思い切りドライな筆致で切り上げてあるので、読んでいてジメジメした感じがありません。

何といえば良いのか・・・読み進む程に、真に音楽の神様から愛されているというのはこういう女性(ひと)の事を言うのだろうな、という気が強くして来ます。もちろん彼女自身は本書の中にそんなこと一言だって書いてはいませんけれども。

それにしても彼女を取り巻くアーティスト達の顔ぶれの豪華さといったら・・・ジェイムズ・テイラー、ダニー・コーチマー、チャーリー・ラーキー、ラス・カンケル、ジム・ゴードンら、名うてのシンガーやセッション・ミュージシャンが目白押し。

彼等 “アメリカン・ロックの重鎮” の素顔が垣間見られる数々のエピソードを愉しむだけでも、一読の価値は大いにあるのではないかと思います。

もちろん、キャロル・キングの創り出した素晴らしい音楽や唄声を、もっともっと深く味わってみたくなる事は言うまでもありません。

(原著:Carole King "A Natural Woman - a memoir" [Grand Central Publishing])

キャロル・キング自伝 ナチュラル・ウーマン