蒼風閑語

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量子力学Ⅲ

お馴染み“岩波講座現代物理学の基礎”第5巻の『量子力学Ⅲ』を読了しました。

まず巻頭に収められた豊田利幸氏による「はじめに」の中に、数学的手法として“位相解析”あるいは“函数解析”の入門部分と“位相群論”のごく初歩を使用する旨が明記されていました。

そこで巻末の参考文献に記載のあった、加藤敏夫氏の『位相解析』(共立出版)及び吉田・河田・岩村3氏の共著『位相解析の基礎』(岩波書店)を参照しながら読み進める事になりましたが、特に前者は懇切丁寧な解説が秀逸な優れた入門書で、おかげで途中の数式理解が随分スムーズになった様な気がします。

さて、本巻には第5部“量子力学の構造”、第6部“量子力学と情報の物理学”、第7部“量子力学的世界像”という3部が収められていました。内訳は第5部が16章「状態と力学変数」で始まり17章「運動の法則」から18章「力学系対称性と運動の恒量」を経て19章「無限自由度の問題」まで。

続く第6部は20章「微視的世界の情報とその論理」と科学哲学的な展開の21章「力学・統計・情報」、そして湯川秀樹氏の筆による総論とも言える第7部は、22章「観測の理論」及び23章「実在論と時間論」の2本立てという構成。

当該講座『量子力学』全3巻を通読しての印象は、まず『Ⅰ』で歴史的な側面を概説する事で量子力学の幹と大まかな枝ぶりを見て、『Ⅱ』では各論を詳説する事によって量子力学の小枝や葉や根っこを見、『Ⅲ』で総括的な考察により量子力学の森全体を見渡す事を試みた、という感じでしょうか。

「集合・位相・測度・代数」という現代数学の大きな流れまで取り込んだ、何とも壮大な「量子の森」の旅でした。

量子力学 I (新装版 現代物理学の基礎 第3巻)

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量子力学 II (新装版 現代物理学の基礎 第4巻)

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復刊 位相解析―理論と応用への入門

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位相解析の基礎

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