蒼風閑語

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ボルツマン

暫く前にネット古書店で買い求めてつらつら読み進めていた、E.ブローダ著/市井三郎・恒藤敏彦訳『ボルツマン』(みすず書房)を読了しました。

「つらつら」とは言っても四六判で280ページ程の小冊なので数日で読み終えてしまったのですが、物理学者ボルツマンの「人となり」を語る本編に翻訳のお二人による2編の補遺を加えた、とてもバランスの良い構成となっていました。

本編は第1部“人間ボルツマン”、第2部“物理学者ボルツマン”、第3部が“哲学者ボルツマン”と大きく3部に分かれており、それぞれが含蓄ある言葉に溢れていて味わい深いのですが、特に第1部の結びに記された以下の件(くだり)はグッと来るところ。

ヴィーン中央駅にあるボルツマンの記念碑は、一九三三年七月に (中略) ヴィーン市の管理にゆだねられた。 (中略) 白大理石の美しいボルツマンの胸像が、この記念碑をかざっている。この胸像のうえに、一つの公式が書かれている。 (中略) ボルツマンの偉大な科学的業績の結晶、短くそして単純な公式

       S = R log W.

エーレンフェストは、ボルツマン自身がクラーク・マクスウェルの方程式について言った言葉を借りて、こう尋ねた。「この記号を書き記したのは、神であろうか?」と。

上式で「エントロピー統計力学的な意味合い」を示した事がボルツマンの大きな業績として有名なのですが、彼の行っていたブラウン運動についての考察が後に結実したのが、以前ここで御紹介したジャン・ペランの『原子』だったりするのです。

ボルツマン―現代科学のパイオニア (1957年) (現代科学叢書〈第46〉)

ボルツマン―現代科学のパイオニア (1957年) (現代科学叢書〈第46〉)