蒼風閑語

ll_bluewind_llのひねもすのたりのたり

熱力学の基礎

昨年7月の“東京国際ブックフェア”で購入して以来なかなか読めないでいた、清水明氏の『熱力学の基礎』(東京大学出版会)をようやく読了しました。

全体的な印象としては、田崎晴明氏の『熱力学―現代的な視点から』(培風館)の記述を「各論的な部分でより詳しく解説し直した」感じで、これに佐々真一氏の『熱力学入門』(共立出版)を加えた3冊で相互補完すれば“公理系の熱力学”では殆ど取りこぼす部分が無くなるのではないかと感じました。

第3章で「平衡状態についての2つの要請」と「エントロピーについての5つの要請」を熱力学の基本法則であるとまず明示しておいて、そこから導かれる結論を詳細に説いて行くスタイルは、まるでよく出来た "Why & How done it ?" 形式の推理小説でも読んでいる様なスリリングなものでした。

また随所に織り込まれた「問題」で再三再四に渡って要求されている、“この節の内容を自分なりの言葉で再構成してみよ”という問い掛けは、ただ内容を確かめるだけの様な設問に紙幅を費す一般的な解説書とは一線を画した、本書ならではのものではなかったかと思います。

尚、凸関数やルジャンドル変換についても田崎氏の著作同様とても詳しく且つ明快な解説が為されており、この熱力学においては大変に“応用し甲斐のある”数学的手法を理解するのに有用であった事を付け加えておきましょう。

熱力学の基礎

熱力学の基礎

 
熱力学―現代的な視点から (新物理学シリーズ)

熱力学―現代的な視点から (新物理学シリーズ)

 
熱力学入門

熱力学入門