蒼風閑語

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物理数学へのガイド

1963年発刊の『物理数学』(岩波書店)に続いて読み進めていた、山内恭彦氏の『物理数学へのガイド』(サイエンス社)を読了しました。

こちらの刊行は1977年と『物理数学』から14年後の事になるのですが、読中読後の感触としては、各章に於けるテーマの選び方が更に具体的になって、より応用に即した記述が為されていた・・・という感じでしょうか。

全体の構成は、1.「ベクトルとベクトル空間」、2.「一次演算子」、3.「関数空間とその演算子」、4.「線型常微分方程式」、5.「ON基底の例」、6.「初期値問題と境界値問題」、7.「超関数」の全7章。

本書巻頭の「はしがき」には“3,5,6が本書の眼目である”とありましたが、個人的には特殊関数に基づく規格化直交基底の具体例を扱った第5章と、量子力学に近接した第6章での応用例がとても面白く感じられました。

更に第7章は、“大変不完全な記述であるが、登りつめた山頂から、向かいに見える手ごわい岩峯を望みながら、ざっとした登攀のルートを示したものと思ってもらいたい”とある通り、とても簡潔でしかも要所を突いた形の超関数への手引きとなっています。

一般関数→特殊関数→超関数へと拡張された「関数論」の流れを、今一度キチンと俯瞰しておきたいなと思わせるに充分な5~7章の記述でした。

*「ON基底」:"Orthogonal Normalized Basis"=規格化直交基底