日本の数学
先頃復刊された小倉金之助氏の著作、『日本の数学』(岩波新書)を読了しました。
今から千数百年も前に中国より伝えられた素朴な算術が、我が国において独自の発展を遂げ江戸時代に和算として大成した後、西洋から輸入された近代数学の前に為す術(すべ)も無く駆逐(くちく)されて行った経緯を“ゆったりとした口調で語る”一冊でした。
ここで“ゆったりとした筆致で綴る”としなかったのは本書が昭和14年に5日間に渡って放送されたラジオ講演の原稿をベースとして、そこに多数の図版を加えるという形で作られていたから。
本文を御一読頂ければ一目瞭然なのですが、まさに当時のラジオ放送の雰囲気を彷彿とさせる、現代の感覚からするとやや慇懃(いんぎん)とも思える語り口。例えばこんな感じです。
“よく考えて見ますと、わが数学の歴史は、日本人が外国からの学問を、どのような態度で受け入れたのか、そしてそれを、どのように消化し、同化改造したのであるかを、物語ってくれるのであります。また、それとともに、日本人の論理や直観、或いは日本人の技能についての特色。その他色々の点におきまして、日本人の性格を、よく示してくれるのであります。”
全5日の2日目に語られる関孝和とニュートンに関する小倉氏の見解を読んでいる内に、本書と同年(1940)に刊行されたアインシュタイン=インフェルト著/石原純訳の『物理学はいかに創られたか』(岩波新書)を再び読み返したくなって来ました。
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