蒼風閑語

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カツオドリ再見

去る5月、当欄で引用した『百姓伝記』に“宵々ごとに海辺に鰹鳥なくこと夏の初めなり”とあった「カツオドリ」。

その時は残念ながら手持ちの辞事典では詳しい事が判らなかったので、やむなく頭注に別名として記載されていた「オサドリ」を採用して何とか訳文を完成させていたのでした。

ところが今日夕刊を捲(めく)っていて目に飛び込んで来たのは、“飛べ カツオドリ―危惧種、野生復帰の試み”という見出し。記事中の小魚を貰っている水鳥の写真には“元気を取り戻したアカアシカツオドリ”とのキャプションまで付いているではないですか!

何でも今月中旬頃に、とある民家の庭先で衰弱して動けなくなっているところを保護されて、都の環境局→動物病院→東京農工大学と収容先を代わりつつ地道なリハビリに励んで来たのだとか。

幸い予後の具合も芳(かんば)しく近々放鳥の運びとなったそうなのですが、実はこのトリ、環境省が“近い将来絶滅の危険性が高い”とされる「絶滅危惧種」に指定していたところから、今回晴れてニュースとして報じられる事になった・・・というのが経緯の様です。

カツオドリだのオサドリだのといった字面を眺めているだけでは丸っきり“想像上の生き物”と大差ない存在だったのが、こうしてその立ち姿や「希少種」だという身の上までも知る事になろうとは。

ひょんな事からアタマの隅っこに残っていた小さな疑問が解決して、ちょっとトクした気分になれた「文月の晦日」でした。