蒼風閑語

ll_bluewind_llのひねもすのたりのたり

アインシュタイン研究

昨年の暮れにネット古書店で見つけて購入していたのになかなか手を付けられないでいた、西尾成子氏編集による1977年刊行の論文集『アインシュタイン研究』(中央公論社)を読了しました。

これは近頃みすず書房からようやく新装復刊された朝永振一郎氏の『スピンはめぐる』や、現在はちくま学芸文庫に収められている高林武彦氏の『量子論の発展史』といった、今や名作と謳われている作品を多数擁していたシリーズ「自然選書」からの一冊です。

内容はさすが同シリーズに書名を列するだけの事はある非常に力のこもった科学史論文集で、当時においては髄一と言っても良かったであろう研究者の面々による緻密で且つ大胆な視点に立った解説は、とても面白くまた読み応えのあるものでした。

収録されていた論文のタイトル及び作者を挙げておくと、まず概論的な内容のものを集めた第Ⅰ部には「現代物理学史における〈重要〉問題」(広重徹)、「アインシュタインの科学革命観」(マーティン・クライン)、「相対論はどこから生まれたか」(広重徹)の3篇。

そしてより専門的・各論的に迫る第Ⅱ部は「アインシュタイン・マイケルソン・〈決定的〉実験」(ジェラルド・ホルトン)、「エーテル問題・力学的世界観・相対性理論の起源」(広重徹)、「比熱の量子論」(トーマス・クーン)、「ボーアとアインシュタインの最初の対話」(マーティン・クライン)という“怒涛の”4篇。

特にこの第Ⅱ部において繰り広げられる、ホルトン氏と広重氏による重厚にして斬新でありながら論旨が明快に伝わって来る解説は、思わず時間を忘れて読み耽ってしまう位に面白く興味深い内容であった事をお伝えしておきましょう。

アインシュタイン研究 (自然選書)

アインシュタイン研究 (自然選書)