蒼風閑語

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元素の王国

物理化学の教科書の執筆者として広く知られているピーター・アトキンス氏の一般向け著作を細矢治夫氏が翻訳なさった『元素の王国』(草思社)を読了しました。

以前古書店の店頭ワゴンで売られていたのを気まぐれに買っておいたのですが、先日何気無く手に取って読み始めたところ、あまりに面白いのでそのまま一息に最後まで読み上げてしまいました。

それにしてもタイトルに『元素の王国』とはあっても一体これは何じゃらほいという感じだと思うのですが、これは化学元素の「周期表」を架空の王国の地図に、歴史上の科学者達をその王国の探険者に見立てたもの。

全編を通じてそのコンセプトに沿って「化学史」を「探険史」に置き換える形でお話が進んで行くのですが、やはり圧巻だったのは“王国案内編”とも言える第1部“周期の王国へようこそ”の中に収められた第3章「地下に潜むリズム」でした。

2次元平面図として捕えがちな周期表を、原子の「質量」「直径」「密度」「イオン化エネルギー」に従った3次元的な“立体地形図”として改めて眺めてみましょうという趣向なのですが、これらの図とその解説が本当に秀逸なのです。

言葉ではなかなか上手く説明が出来なくてもどかしいのですけれども、これを読んでもし「何だろう?」と気になった方がいらっしゃったら、ぜひ実物を手に取ってこの章だけでも御覧になってみて下さい。

*原著 : " The Periodic Kingdom " by Peter Atkins

元素の王国 (サイエンス・マスターズ)

元素の王国 (サイエンス・マスターズ)