春の歌
比較的強めの北風が吹き付けている間は寒さを感じるのですが、さすがに4月ともなると晴れ渡った空で輝くお日様の力も決して弱くはない様で、都内では桜の開き具合も随分と進んだ模様です。
気象情報によるとこの週末、特に明日の金曜日と明後日の土曜日は好天で“絶好のお花見日和”になるとの事。こんな時にはヤッパリ春の歌でしょう・・・と読み慣れた『古今和歌集』を開いてみました。
“世中に たえてさくらの なかりせば 春の心は のどけからまし”
(もしこの世の中に全く桜がないとするならば、春の心は、まことにのどかでありましょう。) 〔巻第一 春歌上〕
在原業平の作とされている有名な歌ですが、なまじ世の中に桜などというものがあるばっかりに、やれ咲きそうだ散りそうだと気になってちっとも落ち着かないではないか・・・という、恐らくは“今も昔も変わらぬ”心情を詠み込んだもの。
同歌は『伊勢物語』第八十二段にも収められているのですが、こちらは何とも余情豊かな「オトナの文脈」の中に置かれており、歌だけで読むのとはまた異なった風情で愉しむ事が出来ます。
歌だけで味わって良し物語の中に置かれてまた良し。これぞ名歌の名歌たる由縁・・・といったところでしょうか。