蒼風閑語

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確率論の基礎

今読んでいる田崎晴明氏の『統計力学』(培風館)にインスパイアされる部分もあって本棚から引っ張り出していた、伊藤清氏の『確率論の基礎 新版』(岩波書店)を読了しました。

本書の初版が出版されたのは1944年という事ですから、かれこれ65年間もの長きに渡って読み継がれて来ているロングセラー。2004年に新版となったのを機に仮名遣いや術語や記号類を現在使われている形に改めたものです。

本文だけなら100ページを少し超える程度の小冊なのですが、確率論のベーシックな部分については文字通り“必要な事は全て入っている”という感じで、まさに基本書の王道路線といった趣(おもむき)。

そうそう、巻頭の「初版への序文」には、こんな記述がありました。

 “確率とは、ルベーグ測度である。” この言葉ほど確率の数学的本質を突いたものはない。今まで明瞭な定義をしないで用いられていた確率変数、事象、等という言葉は、この立場に立って始めて明確な表現を得た。確率変数は可測関数で、事象は可測集合である。

今でこそ測度論と確率論を併せ論じる事は常態となっていますが、当時こんな件(くだり)から一冊の本をスタートさせるというのは、かなり“衝撃的でカッコ良い”事だったのではないかなぁ・・・などと、「昭和19年」に思いを馳せつつ想像力を逞しくしていたのでした。

続いては1957年(昭和32年)の“岩波講座現代応用数学”から単行本化された同氏による著作『確率過程』(岩波書店)でしょうか。

確率論の基礎 新版

確率論の基礎 新版