蒼風閑語

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ガロアの生涯

2年ほど前に筑摩書房の『ノンフィクション全集』に収められていた「抄録」の方に目を通していたのですが、ようやくその「完全版」であるレオポルド・インフェルト著/市井三郎訳『ガロアの生涯 ― 神々の愛でし人』(日本評論社)を読了しました。

代数学群論への魁(さきがけ)となる理論を打ち立てながらも、わずか20歳で「決闘」という何とも言い様の無い理由で夭折したフランスの数学者、エヴァリスト・ガロアの生涯を描いた古典的な名著です。

ガロアが数学史に残した業績について一通りの知識があれば読中・読後の感動も一層大きくなると思うのですが、仮にそういった予備知識が全く無くてもほとんど滞る所無く読み進められる位、大変に“こなれた”訳がなされています。

文学的な薫り高い訳語には難読字も相当数含まれていたので、辞書を傍らに置いて語彙的な捕捉をかなり“盛大に享受”しながらの楽しい読書。全体で500ページ近い結構な大部ながらかなりのスピードで読み上げてしまいました。

読み終えるや否や代数学や楕円関数論のテキストを開いてガロアの業績をこの目で確かめたくなる、親友オーギュスト・シュヴァリエに宛てた“最後の書簡”の内容をつぶさに読んでみたくなる、そんな「読む人の心を熱くさせる」力を持った稀有な一冊ではないかと思います。

原書:"Whom the Gods Love" by Leopold Infeld (McGraw-Hill Book)

ガロアの生涯―神々の愛でし人

ガロアの生涯―神々の愛でし人