蒼風閑語

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空と月と暦

二月ばかりも前だったでしょうか、馴染みの古書店で買い求めておいた米山忠興氏の『空と月と暦―天文学の身近な話題』(丸善)を読了しました。

太陰暦やら月齢やらのアレコレについて判り易く書かれた本があれば目を通しておきたいなぁ・・・とボンヤリ考えていたところへ上手いタイミングで現れた一冊です。

100ページ程の小冊のうえ図はタップリで活字も大きめ、版組みもユッタリと取られており専門書風の堅苦しさは微塵も感じさせません。

和算」と「荘子」について記された「付録」が実に全体の4分の1近いスペースを占めている事からも、むしろ“空と月と暦をネタにした科学エッセイ集”と捉えるのが正解なのかなと思わせる風情も。

実際本書における米山氏の語り口は、今目の前で進められている講義をまさにその場で直(じか)に聴いているかの様な、ある種の臨場感に溢れています。

そこはやはり、長年教育の現場で学生さん達の表情を見ながら御指導に携わって来られた「経験値」みたいなものが、最も色濃く反映されているところなのでしょう。

基礎的な天文学に付随するちょっとした話題をセレクトするセンスと、それを直観的に理解するための手法を熟知した著者にしか書けない、とてもよく考えられた良質な解説書であると思います。

空と月と暦―天文学の身近な話題

空と月と暦―天文学の身近な話題