蒼風閑語

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宇宙の探求

昨年10月末の“神保町ブックフェスティバル”で買い求めていた、小田稔氏1970年の著作『宇宙の探求』(中公新書)を読了しました。

この時代に出版された新書は、現在の粗製濫造気味の新書群に比べると非常に高度な内容で読み応えのあるものが多いのですが、本書もそういった“現在では見られない”タイプの硬質な一冊でした。

全体の構成は、序章「宇宙への招待」、第1章「星の進化」、第2章「銀河系の構造」、第3章「宇宙と宇宙線」、第4章「X線天文学の誕生」、第5章「パルサー中性子星」、第6章「火の玉宇宙の残照」、という流れ。

序章~第2章までは云わば長めのイントロダクションと言っても良さそうなパートで、第3章以降が小田氏の本領発揮とも言うべき宇宙線研究に基づいた記述になっています。個人的にも第3章と第4章を最も興味深く時間を掛けて愉しみました。

本書に引き続いて、同氏が同じ中央公論社から出版なさった『X線天文学』(自然選書)や、本格的な学術書である『宇宙線 改訂版』(裳華房)にも目を通してみたいと思わせるに充分な、格好の“宇宙線研究への手引き書”との出逢いだったのではないかと思います。