蒼風閑語

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複雑系の意匠

2ヶ月ばかり前に神保町の古書店で買い求めていた、中村量空氏1998年の著作『複雑系の意匠』(中公新書)を読了しました。

田口善弘氏の『砂時計の七不思議』に引き続いて読み始めた一冊だったのですが、またしても中公新書に「ヤラレタ!」といったところでしょうか。面白いです。

一頃はまるで流行語の様になって、非常に安易かつ曖昧な使われ方をしていたと記憶しているこの「複雑系」なるコトバですが、本書を読むとその意味するところは“「関係性」を明らかにして行く行為”に他ならないという事がよく判ります。

全体の構成は、序章である「科学の潮流」に続いて第一章「ピュタゴラスの呪縛」、第二章「天界の摂理」、第三章「複雑性と多様性」、第四章「複雑性探求の最前線」、第五章「縁起のパラダイム」、第六章「関係化のウェーブレット」という流れ。

特に第五章は、「複雑性」と「関係性」を理解する為の素材として仏教思想を採り上げるという、ある種“中村氏ならでは”とも言うべき特徴的な一章でした。

選ばれているトピックの多様さと読み応えという点において、グランスドルフ/プリゴジンによる『構造・安定性・ゆらぎ』(みすず書房)と同じ様な読後感があった事を申し添えておきましょう。

複雑系の意匠―自然は単純さを好むか (中公新書)

複雑系の意匠―自然は単純さを好むか (中公新書)