日本の半導体四〇年
ひゅうううううううううん・・・と、まるで音が聞こえて来そうなくらいに真っ青で高い高い空。誰がそう決めた訳でも無いのでしょうけれども、“これぞ秋の空”という気がします。
さて、そんな秋の好日に読み終えた一冊は、菊池誠氏1992年の著作『日本の半導体四〇年』(中公新書)。
研究機関から私企業へと活躍の場を移しながらも常に第一線で半導体に関わり続けた著者による“日本の半導体開発史”とでも言うべき内容だったのですが、これはまたしても「中公新書にヤラレタ!」と言わざるを得ない圧倒的な面白さでした。
ただ、扱っている素材が半導体という決して“誰にでも判り易い”とは言い難いトピックという事もあって、私自身最初の1ページに手を付けるまでにそれなりの時間を要したのも事実ではあるのです。
ところが・・・。
ひとたび読み始めるとこれがもう面白いのなんの。完全に没頭してふと気が付けば既に半分、翌日にはこれまた相当な勢いでアトの半分といった具合で、2日ばかりで読み終えてしまいました。
もちろん取り上げる話題のセレクションも巧みなのでしょうけれども、それだけではこうもスイスイと読み通せるものではありません。
文字通り一級の第一人者にしか書けない類(たぐい)の判り易さというものを、一般向けの新書にまとめ上げることで見事に提示して下さった貴重な一冊ではないかと思います。
佐藤正明氏が1999年に上梓なさったノンフィクション作品の文庫化『陽はまた昇る ― 映像メディアの世紀』(文春文庫)などと併せ読めば、日本の技術開発力を改めて見直す良いキッカケとなるかも知れません。