蒼風閑語

ll_bluewind_llのひねもすのたりのたり

逢わばや見ばや

およそ2ヶ月ばかり前に近所の古書店で買い求めていた、出久根達郎氏2001年のエッセイ集『逢わばや見ばや』(講談社文庫)を読了しました。

同氏の作品については1990年の『古本綺譚』(中公文庫)、2002年の『いつのまにやら本の虫』(講談社文庫)と読み継いで、本書で3冊目となります。

『いつのまにやら~』を読み終えた時にも書いたのですけれども、古本屋さんが書いた古本についての本なので、個人的にはどう転んだところで面白くない訳が無いジャンルではあるのです。

しかし仮にそういった“贔屓目”を差し引いたとしても、出久根氏の書くエッセイにはある種“掛け値なし”とも言える面白さが感じられるのもまた確かなところ。

本書でもそうだったのですが、ひとたび本のページを開いて読み始めるや、最初の2~3行を読んだだけでアッという間に作品の舞台に飛び込んで行ける感じ・・・と言えば“当たらずとも遠からじ”でしょうか。

短いエピソードを書き連ねながら大きな流れを創り出して行く手法には独特のリズム感があって、一旦読み始めるとどんどんページを進めずにいられなくなるところなど、著者のエッセイ名人としての「面目躍如」と言えるのかも知れません。

この本で描かれていたのは、出久根氏が中学を卒業してすぐに集団就職で上京し、若干15歳で古本屋の小僧となってからおよそ2年間に起こった出来事でした。

巻末の「あとがき」によれば、この“自伝エッセイ集”はまだまだ引き続いて書き継がれているそうなので、機会があれば続編の方にも是非目を通してみたいものです。

逢わばや見ばや (講談社文庫)

逢わばや見ばや (講談社文庫)