蒼風閑語

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マリアのバイオグラフィ

半年ばかり前に神保町の古書店で買い求めていた、Robert Levine 著 "Maria Callas - A Musical Biography" (Black Dog & Leventhal  Publishers, Inc.) を読了しました。

本書との出逢いの経緯(いきさつ)は2月のこの欄でお伝えしておきましたが、昨日ようやく最後まで読み終えることが出来たのです。

ハードカバーの立派な装丁にEMI音源からのアリアを収めたCDが2枚封入され、本文には有名なものから珍しいものまで写真が多数掲載。ヴィジュアル・オーディオの両面から愉しめる一冊でした。

全224ページの内、100ページ程が第1章の "An Extraordinary Life" 、続いて30ページばかりの第2章 "The Art, the Tradition, the Voice" を挟んで、第3章 "The Performance of Maria Callas" ではCDに収録された楽曲の解説をするという構成です。

第1章がいわゆる「伝記」的な本論の部分、第2章はオペラ史的・音楽論的な立場から見たカラス像をコンパクトにまとめたパートで、共に要点だけを抽出した上でグッと凝縮させた様な内容。

最後の第3章はアリアの歌詞の原文と英語対訳を掲載した上で、カラスの歌唱についてかなり細かな分析・解説を試みたもの。この章に著者 Levine 氏の主観が最も強く反映されており、個人的に一番愉しんだのもやはりこのパートでした。

なお、巻末には簡単な用語集・年譜・上演データやディスコグラフィなども添えられており、これらが本書の資料的な価値を高める事に一役買っているのは間違いのないところでしょう。

Maria Callas: A Musical Biography

Maria Callas: A Musical Biography