蒼風閑語

ll_bluewind_llのひねもすのたりのたり

スタンド・バイ・ミー

Stephen King の作品集 "Different Seasons" からその第3話、'Fall from Innocence' の副題を持つ中編 'The Body' を読了しました。

ロブ・ライナー監督の映画作品『スタンド・バイ・ミー』の原作としてよく知られている作品ですが、これはもう本当に映画そのまんまのイメージでした。

主人公と彼の3人の仲間が、列車事故で亡くなった子供の死体探しに出かけるという一種の冒険譚なのですが、それが“大人になった現在の主人公”の視点から語られます。

この4人の少年たちは、それぞれが家庭や身体や精神などに問題を抱えており、線路伝いの道中に繰り広げられる様々な事件や沢山の会話は、それらが次第に明らかになって行くプロセスでもあります。

子供特有の酷薄さや身も蓋もない単純さや未だ社会に取り込まれぬ奔放さなどを描写しつつ、子供ゆえに忍耐を強いられる、逃れられない理不尽さやどうにもならない哀しさや抑え様のない憤り・・・みたいなものにもキチンと光を当てている。

しかもそれら全てをノスタルジーというオブラートにくるんだ上で一級のエンターテインメント作品に仕立てているのですから、そのストーリー・テリングの上手さ・巧みさにはただただ舌を巻くしかありません。完全に脱帽です。

尚本作の会話文には、ティーンエイジャー男子特有とも言える決して上品とは言い難い、それだけに何ともカッコいいスラングやジョークがテンコ盛りになっていますので、読まれる際には少しだけ御注意を。

Different Seasons (Signet)

Different Seasons (Signet)