ペレアスとメリザンド
モーリス・メーテルランク著/杉本秀太郎氏の訳による戯曲『対訳 ペレアスとメリザンド』(岩波文庫)を読了しました。
当初はドビュッシーのオペラ作品のリブレット代わりに・・・と思って買い求めたのですが、日本語対訳の部分だけを拾い読みすれば僅か100ページ足らずの分量なので、それこそアッという間に読み終えてしまいました。
ストーリー自体は現代の感覚からすると非常にシンプルで判り易いものと言えそうですが、そこはさすがにメーテルランク、全編に渡って比喩や寓意がふんだんに散りばめられており、しようと思えばいくらでも深読みが可能な作品に仕上がっています。
登場人物の中では特に女性と子どもの台詞が意味深で謎めいており、メリザンドはもちろんのことジュヌヴィエーヌ王妃やイニョルド少年や女中達に至るまでが、作者から多くのキーワードと独自の存在感を託されている感じでした。
またカルロス・シュワブによる幻想的な挿画も印象的で、戯曲のミステリアスな雰囲気と相まって非常に鮮烈な魅力を放っていました。これはもし機会があればカラーの大図版で鑑賞してみたいもの。
尚、童話『青い鳥』の作者といえば思わず「メーテルリンク!」と応えたくなるところですが、フランス語での発音に“より近い”ということで現在は「メーテルランク」と表記するのが慣例なのだとか。
・・・ドビュッシーの歌劇も近日中に愉しみたいところです。