蒼風閑語

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南極ってどんなところ?

国立極地研究所のスタッフと柴田鉄治氏と中山由美さんによる2005年の共著『南極ってどんなところ?』(朝日選書)を読了しました。

実は先だって国立極地研究所のOB会による「南極歴史講話会」なる催しに参加して来たところだったので、このタイミングで本書に目を通すことが出来たのは実にタイムリーだったのです。

その時に聴いたお話の印象を強く残した状態で取り掛かったこともあり、期せずして何とも興味深く愉しい読書体験となったのは幸いなことでした。

本書は大きく11の章から構成されており、内訳はまず序章代わりの0章「南極ってどんなところ?」、1章「南極に発つまで」、2章「南極その日その日」、3章「南極の生き物」、4章「氷床の一生」、5章「暁の女神オーロラ」、6章「オゾンホールと大気大循環」、7章「南極は隕石の宝庫」、8章「最古の大陸」、9章「南極観測を支える人々」、そして10章「南極観測の歴史」という流れ。

極地研究所のスタッフが筆を執った0章と3章~9章が地球科学に寄り添った内容、ジャーナリストの中山さんと柴田氏が綴った1章・2章と10章が柔らかい筆致のルポルタージュ及び解説記事・・・と傾向の異なる文章が非常にバランスよく配置されており、これが全体的な読み易さ、スムーズさを生み出していた様な気がします。

また第0章に掲載されている南極全体と昭和基地周辺の地形を示す地図は読中何度も立ち返って参照することになる重要な図版なのですが、その地図上に記載されたデータも本文を読む上で必要にして充分なものに限られているなど、直観的な理解を妨げない工夫がなされていた点も評価に加えておきたいところでしょうか。

南極についての一般向け入門書として過不足感のない、とてもベーシックな一冊と言えそうです。

南極ってどんなところ? (朝日選書)

南極ってどんなところ? (朝日選書)