蒼風閑語

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42.195kmの科学

NHKスペシャル取材班の善家賢(ぜんけ・まさる)氏がこの2月に上梓なさった『42.195kmの科学』(角川oneテーマ21)を読了しました。

マラソン界のスーパースターであるエチオピアのハイレ・ゲブレシラシエ、ケニアのパトリック・マカウ、そして同じくケニアのウィルソン・キプサングという3名の「2時間3分台ランナー」を俎上に上げ、その速さの解明を試みた一冊。

全体は大きく4つのパートに分かれており、内訳は第1章「マラソンを高速化させた肉体の秘密」、第2章「究極の“省エネルギー走法”」、第3章「最強ランナーが生まれる驚異のビジネスモデル」、第4章「人類が2時間を切る日~マラソン研究の最前線~」という流れ。

サブ・タイトルに『―マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」』とある通り、本書のキモの一つは第2章におけるマカウの“つま先着地による上下動の少ないスムーズで効率的な走り”の究明にある・・・と言えるでしょうか。

短距離のスプリンターが重心を高く保持し歩幅を伸ばすために採用する「つま先着地」をマラソンに取り入れ、更に上下動の少ない「忍者走り」を実践する事によって驚異的な省エネ化と高速化を実現。

加えてフィニッシュ・タイムに対する1kmごとのラップ・タイムを常に意識し、それを秒単位でコントロールしながらランニングのペースを最適なものに維持する・・・。

コトバにしてしまえば何だか簡単そうですが、これを42.195kmの長きに渡って実現する事がいかに困難であるかは私達シロウトにも容易に想像出来るところではないでしょうか。

競技者のみならず趣味でランニングやウォーキングなどを愉しんでいらっしゃる方々も、本書を読むことで自らの歩き方・走り方を見直すキッカケになるかも知れません。

とにかく面白いです。ぜひ御一読を。