蒼風閑語

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松井教授の東大駒場講義録

松井孝典氏2005年の著作『松井教授の東大駒場講義録』(集英社新書)を読了しました。

松井氏が東京大学教養学部で実施した11回の講義をベースとしつつ、更に加筆して文系読者にも抵抗なく読める様コンパクトにまとめた一冊。

全体は実際のカリキュラムに沿った11の章に分かれており内訳は、1.「地球、生命、文明の普遍性を宇宙に探る」、2.「地球環境の成り立ちと変遷」、3.「文明とは何か」、4.「生命の普遍性を宇宙に探る」、5.「太陽系とは?」、6.「もう一つの地球はあるか」、7.「太陽系起源論」、8.「系外惑星系」、9.「地球の起源」、10.「天体衝突と地球の進化Ⅰ」、11.「天体衝突と地球の進化Ⅱ」という流れ。

基調を成しているのは宇宙科学・地球科学・気象学などのエッセンスを全て含んだ「地球惑星科学」の概論なのですが、随所で生物学や生命科学などに関するトピックもセレクトされており、採り上げられる話題はかなり多岐に渡っていると言えます。

よく吟味された平易な語り口でかなり高度な内容についても余りに「サラリと」語られてしまうため、ウッカリすると内容を咀嚼せずドンドン読み進めてしまいそうになるのが、本書唯一の "ポジティヴなウィーク・ポイント" と言えるかも知れません。

私自身は比較的汎用性のある『理化学辞典』(岩波書店)を傍らに置き、1日1章ずつを基本ペースとしておよそ半月程を掛けてジックリと愉しみました。

巧みな筆捌きで雄大な研究テーマの一端を垣間見せて下さる、一級の「地球惑星科学入門」ではないかと思います。