蒼風閑語

ll_bluewind_llのひねもすのたりのたり

野茂英雄

ロバート・ホワイティング著/松井みどりさんの訳による2011年の著作『野茂英雄』(PHP新書)を読了しました。

スポーツ選手を描いた作品なのに写真が一点も掲載されていないのが残念といえば残念なところではありましたが、まぁそこはそれ。記憶の中にある映像を何度でもリプレイすれば済むことでしょう。

さてさてそれにしても本書を読み終えてつくづくと感じてしまうのは、「日本のプロ野球と米国のベースボールの根本的な違い」の大きさでしょうか。

個人的に日本のプロ野球の試合をTVで観たいと思うことなど滅多にありはしませんが、野茂氏の渡米以降頻繁にオン・エアされる様になったメジャー・リーグの中継なら、日本人の出場の有無を問わず観ていたいという気分になります。

「全くの騒音」としか思えない鳴り物入りの応援を筆頭に理由は多々あると思うのですが、その一つとして、メジャー・リーグにおける「チームと選手と観客の関係性のあり方」みたいなものに、ある種の「公平さ」や「明朗さ」や「誠実さ」を感じるから・・・というのがあります。

そしてその「公平さ」や「明朗さ」や「誠実さ」が、プロ・スポーツやショウ・ビジネスに原則としてある「不平等さ」や「酷薄さ」や「過剰さ」と裏腹になっている事も、本書を読むとよく理解出来ます。

まずチームがあってその構成要員として選手がいる日本のプロ野球と、まず個人としての選手がいてその総体としてのチームがあるというメジャー・リーグ。当然そこで支払われるのも構成員に向けての「サラリー」ではなく個人の技量に対する「ギャランティ」。

・・・色々と思うところもあって書き始めるとキリが無いしなかなか上手くまとめられないのですけれども、何も考えずに当時の野茂氏の活躍ぶりを思い出しながら読み進めるだけでも充分に面白い一冊です。是非御一読を。