蒼風閑語

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藻類30億年の自然史

昨年の“神保町ブック・フェスティバル”で購入していた、井上勲氏の『藻類30億年の自然史 第2版』(東海大学出版会)を読了しました。

副題に「藻類から見る生物進化・地球・環境」とある事からも判る通り、内容は多岐に渡っており本文だけでも580ページを超えるのですが、膨大な参考文献リストと詳細な索引を併せると650ページ近くなるという結構なボリューム。

全体は大きく第1部の「藻類ウォッチング」と第2部の「藻類30億年の歩み」という2部構成になっているのですが、第1部がやや博物学的というかヴァラエティに富んだ構成なのに対して、第2部は地球生命史に寄り沿う形で本格的な“藻類の生物学”が展開されます。

よって第1部は様々なトピックをそれなりに愉しみながら、第2部になるとかなり読み応えのある専門的な記述が続くので、お馴染み『ケイン生物学』(東京化学同人)やニック・レーンの『ミトコンドリアが進化を決めた』(みすず書房)から該当箇所を読み返しながら、時間を掛けて読み進める事になりました。

それにしても、「藻類」をキーワードにあくまでも「生物全体」について網羅的に記された本書を読んで行くに従い、生物及び生物学の「多様性」ばかりでなく「共通性」の方をこそ強く認識させられる場面が少なくありませんでした。

恐らくはそれがこの大著の最後に置かれた第16章「プロティストロジー・ルネッサンス」において作者が提言している、原生生物研究という“生物学の大きな流れ”に繋がる思考プロセスなのだ・・・という事なのだと思います。

藻類30億年の自然史―藻類からみる生物進化・地球・環境

藻類30億年の自然史―藻類からみる生物進化・地球・環境