梁塵秘抄のうたと絵
五味文彦氏2002年の著作『梁塵秘抄のうたと絵』(文春新書)を読了しました。
本書を読むにあたっては、まずは本棚の奥から “新古典文学大系” の第56巻『梁塵秘抄・閑吟集・狂言歌謡』(岩波書店)を引っ張り出すところから。
こういうものは解説だけをひたすら読み下すよりも、オリジナル・テキストを適宜参照しながら愉しんだ方が面白いに決まっています。
さてこの『梁塵秘抄』に収められているのは「今様」と呼ばれる形式の古歌謡です。試しに古語辞典を引いてみると「今様歌」の見出し語でこんな語釈。
【いまやう‐うた】 今様歌
神楽歌や催馬楽、風俗歌などの伝統的な歌謡に対して、平安時代に新たに起こった新しい様式の歌謡の総称。当世風のはやり歌。狭義には、平安時代の末から鎌倉時代にかけて、遊女や白拍子などによって盛んに歌われた、七五調四句形式の歌謡を指す。単に「いまやう」とも。
ではついでに「梁塵」も見ておきましょう。
【りゃう‐ぢん】 梁塵
①梁の上の塵。②(中国漢代の魯の虞公が歌うと梁の上の塵まで動いたという故事から)優れて妙(たえ)なる歌声。また、歌謡・音楽。
(共に『小学館 古語大辞典』より抜粋)
で、その『梁塵秘抄』に収められた「今様」の中から名歌と思われるものを選び出し、中世絵巻に見られる当時の風景と対照させながら味わって行きましょう・・・というのが本書の趣向。
絵巻については、『一遍聖絵』『法然上人絵伝』『春日権現験記絵』『西行物語絵巻』『年中行事絵巻』『石山寺縁起絵巻』『鳥獣戯画』の各編から採られており、これを仔細に眺めるだけで充分に愉しい位。
もし機会があればこれらの絵巻物をカラーで鑑賞してみたいものです・・・などと書いている内に内容について記す余裕が無くなってしまいました。ここはこの今様集の中で最も有名であろうと思われる歌を引いて、一旦締めておく事に致しましょう。
「遊びをせんとや生れけむ 戯れせんとや生れけん 遊ぶ子供の声聞けば 我が身さへこそゆるがるれ」 (第三五九番歌)