蒼風閑語

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伊良部秀輝

団野村氏が今年の3月に上梓なさった『伊良部秀輝』(PHP新書)を読了しました。

ロバート・ホワイティング著/松井みどり訳による『野茂英雄』(PHP新書)と併せ読みほぼ同時期に読み終えたのですが、野茂・伊良部両氏が米国で活躍した時期もほぼ重なっている事から、併読作品のセレクションとしては悪くなかった気がします。

全体は大きく5つの章に分かれており、内訳は第一章「伊良部秀輝の真実」、第二章「彼の志がポスティングを生んだ」、第三章「ヤンキースから愛された日本人」、第四章「繊細な芸術家」、第五章「生涯投手としての渇望」という流れ。

私自身は基本的にプロであれアマチュアであれ「プレイヤー」若しくは「アスリート」と呼ばれている以上純粋にプレイやパフォーマンスそのもので評価されるべきで、本人のキャラクターや瑣末的なエピソードといった類いの情報は二の次、三の次だと考えています。

なので出来れば本書でも、伊良部氏が日本球界とメジャー・リーグで「投手として」達成した業績を、もう少しばかり丹念に掘り下げて欲しかったなぁ・・・という気がしなくもありません。

そういった部分はファンの方で先刻承知だろうと判断して、伊良部氏の人となりや日米球界のインサイド・ストーリーを中心とした記述になさったのだろうなと推察するのですが、読んでいてあの豪快なピッチング・フォームがほとんど目に浮かんで来ないのが残念なところ。

伊良部氏が生前に成し遂げた「野球そのもの」についての評価にもう幾許(いくばく)かの紙幅を割いて下されれば、更に愉しい読書体験になったかも知れないな・・・などと思っているところです。

伊良部秀輝 (PHP新書)

伊良部秀輝 (PHP新書)