蒼風閑語

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英語研究者のために

田中菊雄氏の代表作を1992年に文庫化した『英語研究者のために』(講談社学術文庫)を読了しました。

田中氏といえば『岩波英和辞典』の編纂者として名を連ねている事でその名を知られていますが、本書は同氏が一般向けに英語学習の心得を説いた啓蒙書で初版の発行は1940年にまで遡ります。

文庫化にあたっては巻末に「解説」を添えられた遠藤光氏が補訂の労をとられており、上記初版、1948年の「改版」、1955年の「第三版」、1966年の「新版」という4つの版を巧みにリミックスした新装・改訂版となっていました。

全体は大き2つのパートに分かれており、前半はいわゆる本論部分で26の章立てからなる英語学習の手引、そして後半は2つの付録が収められておりこちらはお薦めの書籍リストと自伝的なモノローグという組み合わせ。

読みどころと言われれば最初から最後まで全てが読みどころ・・・といった風情で、英語学習者にとっては思わず引用したくなる様な金言、暗唱してしまいたくなる様な名文句に満ちており、凡そ本を置く暇(いとま)を与えません。

今日はその中から特に、第二十六章「英語独習者諸君に」の一部を引用しておきたいと思います。

 “しかも読解力と作文文法の力を養うには、独学でどんな山間僻村(へきそん)に居(お)ったって立派にできるものである。また年齢なども、それは若い時から始めるに越すことはないが、いくら年取ってからでも決して遅すぎるということはない。殊(こと)に今日のような高度に文明の発達した時代においては、外国語の研究などはまったく朝飯前であるといってよろしい。できないほうがよほどどうかしているぐらいのものである。志ある者には機会は常に与えられるものである。「求めよさらば与えられん、叩けよさらば開かれん」と言われたとおりである。”

英語研究者のために (講談社学術文庫)

英語研究者のために (講談社学術文庫)