作家の値段
出久根達郎氏2007年の著作を2010年に文庫化した『作家の値段』(講談社文庫)を読了しました。
一昨日の岡崎武志氏といい出久根氏といい、古書店に詳しい方や古書店主が古書籍について語っているというだけで個人的にはストライク・ゾーンなので、内容的に面白く無かろう筈もありません。
文庫とはいえ400ページを越すなかなかのボリュームでしたが、最後まで本当に愉しく読み通す事が出来ました。
さて、本書のコンセプトは著者がセレクトした24人の作家の初版本について、その古書価を提示しながら作品にまつわるエピソードなどを語るというもの。
口絵にある司馬遼太郎の『竜馬がゆく』、川端康成の『伊豆の踊子』、夏目漱石の『吾輩は猫である』、三島由紀夫の『仮面の告白』、江戸川乱歩の『少年探偵団』シリーズなどは思わず溜息が出る様な値が付けられていますが、それ以外にも「えっそんなに?」とビックリしてしまう例がたくさん出て来ます。
ちなみに本書で採り上げられている作家陣は、司馬遼太郎・三島由紀夫・山本周五郎・川端康成・太宰治・寺山修司・宮沢賢治・永井荷風・江戸川乱歩・樋口一葉・夏目漱石・直木三十五・野村胡堂・泉鏡花・横溝正史・石川啄木・深沢七郎・坂口安吾・火野葦平・立原道造・森鴎外・吉屋信子・吉川英治・梶井基次郎・・・という顔ぶれ。
もちろん各編の記述を味わえばどの作家も読んでみたくなること請け合いです。ただしこれで初版本愛好の道にハマるかどうかは読者次第・・・といったところでしょうか。
私自身は理工系の学術書を読む事も多いので誤植の多い初版にはなるべく手を出さないようにしていますし、古書価を上げる要素の一つである「帯」についても邪魔なので買ったらすぐに捨ててしまっている位ですから、何をか言わんやですね。