蒼風閑語

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音と音波

2007年の暮れに復刊された“基礎物理学選書”からの一冊で、小橋豊氏による1969年の著作『音と音波』(裳華房)を読了しました。

サブテキストにと選んだ小方厚氏の『音律と音階の科学』(講談社ブルーバックス)がとても面白くて、アッという間に読んでしまった勢いを受けながらの取り組みだったのですが、取り上げられているトピックの幅広さは“特筆モノ”でした。

今単独で「音・音波」といえば、「音響テクノロジー」などと呼ばれている工学の一分野をイメージしますし、実際物理学だと「振動・波動」というカテゴリーの中に括(くく)られてしまっている場合がほとんど。

ところが本書では“音とは何か”という根源的な問い掛けから始まって、振動現象についてや音波のふるまい、音場の概念に加えて聴覚や発声器官のメカニズム、果ては音楽・楽器や再生装置としての音響機器の特性に至るまで。

また補遺的な扱いながら、最後の2章では騒音などのいわゆる「環境音」や応用としての「超音波」にも触れており、“音の科学”の全体像を一通り俯瞰するにはまさしく「うってつけ」と言える内容です。

物理的な面白さのみならず、音楽をより豊かに愉しむための“ちょっと難しめの予備知識”としても、充分に読み応えのある一冊でした。

音と音波 (基礎物理学選書 (4))

音と音波 (基礎物理学選書 (4))