微分形式の理論
ハーレイ・フランダース著/岩堀長慶訳により1967年に刊行された『微分形式の理論―およびその物理科学への応用』(岩波書店)を読了しました。
そもそも本書を手にしたのは、田崎晴明氏の『統計力学』(培風館)の中で参考図書として取り上げられていた事がキッカケだったのですが、読み始めてすぐに持った感想は「あれ?何だか微分幾何か相対論の本みたい」・・・というもの。
少し読み進めてから巻末の「訳者あとがき」に目を通してみると、
“微分形式なるものは、交代(=歪対称)テンソル場のことに他ならぬから、微分形式論は形式的にはテンソル解析に含まれる。”
と記されてあってナルホドと合点が行き、一気に見通しが明るくなった気がしました。あぁ「上添え字」やら「外積記号」やら「直積記号」なんかが出て来るんだなとあらかじめ分かっただけで、ずいぶんと取り組み易くなる気がして来るから不思議なものです。
先だって読み終えた大森英樹氏の『一般力学系と場の幾何学』(裳華房)や矢野健太郎氏の『接続の幾何学』(森北出版)などとリンクする部分も少なからずあったので、これらの関連書の様な感じで面白く読み上げる事が出来ました。
そこそこの条件が揃った時に限りピンポイント的に強力な効果を発揮する、ある種対症療法的に使用される処方薬みたいな部分こそが、どうやら「微分形式」というフォーマットを理解する上でのキモになる様です。
本書はこの形式について物理学の立場から簡潔な解説を試みた一冊という事なので、数学の立場からもう少し厳密に書かれたものにも取り組んでみたいなと思っています。