一般力学系と場の幾何学
いたるところで難渋しながらもユックリユックリ読み進めていた、大森英樹氏1991年の著作『一般力学系と場の幾何学』(裳華房)を読了しました。
最初の出逢いは近所の小さな図書館。理工書棚の中に佇んでいたのを引っ張り出して拾い読みしていたのが段々面白くなって来たところで、ちょうど古書店の棚にハードカバー版を見つけてしまったのがまさに「縁」だったのでしょうか。
本書については「運動量写像」についての稀有なテキストであるとか「シンプレクティック多様体の量子化」に関する好適な解説書であるとか「物理学と数学の境界を幾何学の立場から俯瞰した本」であるとか、実に様々な形容がなされています。
そう言われたところで「何じゃそれは?」となるのが関の山なのですが、確かに扱われているトピックや必要とされる基礎知識はかなり多岐に渡っており、内容はボンヤリ読んでいると「ところでコレ一体何の本だっけ?」といった事態に陥りかねない程の濃密さ。
冒頭と結部の二度に渡って述べられる「点とは何だろう」という問いかけを常に頭に置いておかないと、大森氏が最後に「量子場」と題する1章を設けて下さった意図がまるっきり理解出来なくなってしまいそうな感じすら。
本書の終盤近くに唯一“脚注ではなく本文中に”挿入された参考図書として、高橋康氏の『古典場から量子場への道』(講談社サイエンティフィク)が挙げられているのを見て、ようやく著者が本書で述べたかった「キモ」の様なものが、チラリと垣間見えた気がしたのでした。
かなり大変でしたが、コレは相当に“難しくて面白い”一冊です。