蒼風閑語

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場の量子論

“岩波講座現代の物理学”から第5巻、大貫義郎氏の『場の量子論』(岩波書店)を読了しました。

今年のはじめ頃に読み終えた同講座の第1巻『力学』に続いて大貫氏のシャープな語り口を堪能した訳ですが、本書でもその硬質な内容を扱いながらも膨らみの感じられる解説ぶりは健在でした。

それは巻頭の「まえがき」で場の量子論発展のあらましを簡単に概説した後に続けた、こんな件(くだり)に集約されている様です。

 “例えば、場の量子化とは何か、それはいかなる条件のもとでどのような可能性をもつか、また場の理論での対称性はどのように理解され扱われるべきか等々、場の量子論を学ぶからには一度は誰でも自分なりに整理し理解しておくべき話題であるが、ここではそれを時間をかけて丁寧に眺めようというわけである。”

全体の構成は、まず第1章が「波動の中の粒子像」、第2章が「自由場の量子論」、第3章「対称性と保存則」、第4章「不連続変換」、第5章「伝搬関数」、第6章「対称性の自発的破れ」、そして最後が第7章「摂動展開」で、その後に3つの「付録」が添えられるという流れ。

個人的には1章から3章までのスムーズさが読んでいて気持ち良かったのと、やはり一定の紙幅を割いて詳述される第6章にトピックとしての面白さを感じました。

そして意外と読み応えがあってかつ有用でもあったのが、最後に添えられていた10ページ程の「付録」です。“Bose振動子とHilbert空間”、“γ行列とDirac振幅”、“電磁場の系”という3つのお題から成っていたのですが、特に最後の一遍は秀逸。

最後の1ページまで「読んで良かった」と思わせて下さる、懇切にして丁寧な“場の量子論序説”だと思います。

場の量子論 (現代物理学叢書)

場の量子論 (現代物理学叢書)