蒼風閑語

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摩擦の世界

先週神保町のとある古書店の均一台で見つけて持ち帰った、角田和雄氏1994年の著作『摩擦の世界』(岩波新書)を読了しました。

買い求めた日に帰りの電車の中でパラパラと拾い読みし始めたところが面白くてなかなか途中で止められず、結局他の本を差し置いて今日最後まで読み上げる事になりました。

本書の大まかな立ち位置としては、工学の立場から見た“摩擦アラカルト”といったところになるのでしょうけれども、「科学と技術」「研究と開発」「基礎と応用」みたいな二律背反・表裏一体な命題を改めて考え直すにも好適な一冊だったと思います。

通読するとやや手を広げ過ぎなのかな・・・と思うところも無い訳ではないのですが、その“取り留めのない”感じも少し見方を変えてみれば、摩擦の支配下に置かれる地上の森羅万象の多様性そのものを象徴しているとも言えそうです。

全体は大きく5つの章に分かれており、内訳はⅠ「摩擦と出会う」、Ⅱ「自然のなかの摩擦」、Ⅲ「機械と摩擦」、Ⅳ「摩擦とたたかうベアリング」、Ⅴ「新しい摩擦の科学、トライボロジー」という流れ。

個人的に知識として最も読み応えを感じたのはⅣ「摩擦とたたかうベアリング」、著者の考えがよく表れていて最も面白かったのはⅤ「新しい摩擦の科学、トライボロジー」でしょうか。

この第Ⅴ章で少しだけ触れられている『ファインマン物理学Ⅰ 力学』(岩波書店)の摩擦に関する記述(第12章「力の性質」第2節)を、久しぶりにジックリと読み返してみたくなって来ました。

摩擦の世界 (岩波新書)

摩擦の世界 (岩波新書)