関数解析
伊藤清三氏の『ルベーグ積分入門』(裳華房)に続いて読み進めていた、黒田成俊氏1980年の著作『関数解析』(共立出版)を読了しました。
しばらく前に読み終えた田崎晴明氏の『統計力学』(培風館)や、新井朝雄氏の『ヒルベルト空間と量子力学』(共立出版)などでも参考図書として挙げられていた一冊。
類似の書としては数年前に、加藤敏夫氏の『位相解析』(共立出版)をとても面白く読んだ記憶があるのですが、本書における記述の判り易さと懇切さは加藤氏のそれに優るとも劣らないものでした。
黒田氏は長年に渡って加藤氏から師事を受けたという事もあってか、論旨のベーシックな部分はもちろん筆致にも多分に共通点が見られる様で、類書の選択としては最良と言っても良かったのではないかと思っています。
ルベーグ積分を書中でどう扱うかについて苦慮されているところも師弟共通で、本書には附録として収められ加藤本では本文中に一章を設ける・・・という差はありましたが、その記述の巧みさにおいては共に甲乙の付け難い出来映えではなかったかと。
本書に続いては、関数解析の中では各論の一つであるフーリエ級数についてもう一歩踏み込んだところまで進んでみるか、もしくはスペクトル理論の方へ向けて足を伸ばしてみるか、少しばかり時を置いて考えてみようと思っているところです。