蒼風閑語

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生命の物理

明日からは早師走という霜月の晦日(つごもり)の今日、“岩波講座 現代物理学の基礎”第9巻『生命の物理』を読了しました。

所謂“生物物理学”と呼ばれる分野の本格的なテキストに目を通すのは初めての事だったので、一般化学・有機化学・生化学等の入門書や辞事典の助けを適宜借りながらの愉しい通読となりました。

全体は大きく4部から成っており、まず第1部が生物学のベーシックな部分を述べた“構造と機能”、続く第2部は熱力学と生物系の関係性を説く“エネルギー・情報転換系”、そして統計力学的な展開を試みる第3部“非周期秩序系としての生体”を経て、モダンなテーマを含んだ第4部“情報と論理”という流れ。

個人的にはやはり熱力学・統計力学に近い第2部と第3部を面白く読みましたが、特に第2部で詳しく論じられた“ヴォルテラの力学”の応用例と問題点についての記述は「データと式の取り扱い」について多くの示唆を与えられる内容でした。

また、本文中にも出て来たウィーナーの『サイバネティックス』(岩波書店)やブリルアンの『科学と情報理論』(みすず書房)辺りは、歴史的な意味合いも含めて機会があれば是非目を通しておきたい感じ。

実際に読むまでは当講座中最も毛色が違って見えた巻でしたが、化学・生物学方面への新たな興味を開くには十分過ぎる程強い魅力を持った1冊でした。

生命の物理 (新装版 現代物理学の基礎 第8巻)

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サイバネティックス―動物と機械における制御と通信

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科学と情報理論

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