蒼風閑語

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理論物理学

1ヶ月ほど前にもここで少し御紹介しておいた、カンパニエーツ著/山内恭彦・高見穎郎訳『理論物理学』(岩波書店)を読了しました。

物理学の大きな括(くく)りから力学・電磁力学・量子力学・統計物理学という4つのカテゴリーを選んで論じた概説書だったのですが、全体で670ページというボリュームを些かも負担に感じさせない軽快な記述が特徴。

各章の程良い長さと著者の明快な語り口は勿論の事ながら、恐らくは訳業の巧みさも多分に影響しているのでしょう。あんまり読み易くて面白いのでどこへ行くにも持ち歩いてはいろんな所で読み耽っていました。

巻末の「訳者あとがき」にもある通り、本書は“極度に専門化した今日の物理学の理論を、最近の発展まで取り入れ、一貫した体系として1冊の本にまとめたもの”であると同時に“わかり易く、厳密かつモダーンなもの”でもありました。

内容についても“全体の理論体系の構成も、オーソドックスで新奇をてらったところはないが、清新の気に満ちている”という言葉が正にピッタリ来る感じで、いろいろな本を読み散らかして散在していた知識を改めてキチンと整理して貰ったような気がしています。

以前この欄のタイトルにもしたのですが、これこそが「優れた概説書の効用」とでも言うべきものなのでしょう。