蒼風閑語

ll_bluewind_llのひねもすのたりのたり

線型偏微分方程式論

3月に『偏微分方程式入門』(東京大学出版会)を読み終えてから3ヶ月余り。比較的ユックリと目を通していた金子晃氏の『定数係数線型偏微分方程式』(“岩波講座 基礎数学”分冊)を読了しました。

とても面白く読み進めた『入門』の方に参照文献として挙げられていたので引き続いて取り掛かったのですが、第1章「超関数」・第2章「Fourier変換」・第5章「境界値問題」と興味深いトピックが目白押しで、いい加減に読み飛ばせる様な弛緩した部分がありません。

一見純粋数学的な立ち位置を取りながらも、常に実際的な応用との関わりに一意を添えようとする著者のアプローチは本書に於いても同様で、例えば第1章には超関数の概念を一言で表わすこんな件(くだり)がありました。

 “われわれは初等微積分でNewton-Leibniz式の微分やRiemann積分の間の相互関係がしっくりゆかぬ病的な例を沢山習う。偏微分方程式の考察にこれらを継承するのは愉快なことではない。そこで以下われわれは関数が安心して何回でも微分できるように関数の概念を拡張する。これによって微積分の演算は円滑となり線型偏微分方程式論は見通しの良いものとなる。”

そしてその拡張の為の道具こそが「超関数」というものなのだ・・・と続けられると、その時点で頭の中に出来上がった具体的イメージによって、以後の無用な混乱や誤解は随分と軽減されます。

思えば今年に入ってから江沢洋氏の『漸近解析』(“岩波講座 応用数学”分冊)、藤原大輔氏の『線型偏微分方程式論における漸近的方法』(“岩波講座 基礎数学”分冊)に続いての上記2冊、と結構「偏微分づいて」いたのですが、ここで大体一段落付いたのかな・・・という気がしているところです。