蒼風閑語

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マリア・カラス

随分前に購入して長らくそのままにしていた、ピエール=ジャン・レミ著/矢野浩三郎氏の訳による『マリア・カラス ― ひとりの女の生涯』(みすず書房)を読了しました。

とにかく大好きで、彼女が歌っているオペラの全曲盤はCD棚の中に何セットあるのか判らない程なのですが、それなりにシッカリと書かれた評伝に目を通すのは今回がほぼ初めての事でした。

全面的に好みの文章だったかといえば正直そうでないところもあったのですが、そこはやはり題材があのマリア・カラスなのですから内容的に面白く無かろうハズもありません。

カラスの死から間もない頃に出版された一冊だけに所謂“最新のトピック”みたいなものは含まれていませんが、在野の研究者であるレミ氏の著作だけあって非常に“ファンに近い視線”による筆致が特徴的でした。

訳文も比較的平易で最後まで滞るところ無く読み切ることが出来ますが、巻末に添えられている「カラスの上演オペラ」と「ディスコグラフィー」は資料としてもなかなかの充実度。

オフィシャル作品のみならずマイナー・レーベルからの海賊版にも言及しているところにレミ氏の“コアなファンとしての目線”が活かされており、その辺りがややマニアックな読者からも本書が支持される所以となっているのでしょう。

大のカラス好きが普通のカラス好きに贈る愛情溢れるカラス本・・・と言って良いのかも知れません。

マリア・カラス―ひとりの女の生涯

マリア・カラス―ひとりの女の生涯