次に来る自然災害
京都大学の鎌田浩毅氏がこの5月に上梓なさった近刊、『次に来る自然災害』(PHP新書)を読了しました。
サブタイトルに“地球科学入門Ⅰ”とある通り引き続いてシリーズとしての続刊が予定されており、現在は既に第Ⅱ巻が新刊書店の店頭に並んでいる様です。
さて本書ですが、昨年の東日本大震災発生時に『週間東洋経済』誌に「ビジネスパーソンのための地球科学」というタイトルで連載されていた記事を元に新書化したものだそうです。
そういった事情も手伝ったのでしょうか、内容的には広義の地球科学というよりも、むしろ災害対策に直結するトピックをセレクトしたリテラシー集といった趣でした。
「地震」「火山」「異常気象」という、自然災害もしくはそれらに繋がる可能性を孕んだ自然現象を3つ採り上げる事で、結果的に地球科学の重要なテーマを網羅する形になっている・・・という感じでしょうか。
内容はさすがに研究者らしくベーシックかつストイックなもので、イタズラに危機感や恐怖心を煽ること無く、あくまで危険なことは危険だし、判らないことは判らないのだと、現時点での知見を元に明快に解説しています。
実際に災害が起きてしまった時の行動マニュアルと言うよりも、むしろこういった自然現象が発生する原因や要因を理解し、現状を正しく認識しておくための「備忘録」とも言えそうな構成。
各節末には私達が心得ておくべき要点が「Point」として短くまとめられており、読後に内容の再確認をしたり時間が無くて“部分読み”をする方への配慮も行き届いた一冊でした。
“読まれるための工夫”が随所に凝らされた、まるで実用新書のお手本の様な「良書」ではないかと思います。